民泊をやめる方法は「廃業する」「休業する」「事業として売る」の3つです。廃業する場合、住宅宿泊事業(民泊新法)は廃業の日から30日以内に廃業届、旅館業(簡易宿所など)は廃止から10日以内に廃止届が必要です。売る場合、住宅宿泊事業の届出は買い手が新たに届け出ますが、旅館業の許可は、譲渡の前に自治体の承認を受ければ、買い手が営業者の地位を引き継げます。賃貸物件なら、どの方法でも最初に確認するのは賃貸借契約です。
民泊をやめたくなる主な理由
民泊をやめたいという相談で多いのは、次のような理由です。
- 清掃の手配やゲスト対応に追われ、本業や家庭との両立が難しくなった
- 稼働率や単価が下がり、手元に残るお金が減った
- 近隣への配慮や規制への対応に疲れた
- 引っ越し・転勤・相続など、生活の事情が変わった
- 別の事業に資金と時間を回したい
どの理由でも、「やめ方」によって、かかるお金と戻ってくるお金が大きく変わります。まずは3つの選択肢を並べて比べてみましょう。
3つの選択肢の比較
| 選択肢 | お金の動き | 主な手続き | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 廃業する | 原状回復・家具家電の処分・解約予告期間の賃料などで出費 | 廃業届・廃止届、賃貸の解約、予約の停止 | 物件を自分で使う、貸主が譲渡を認めない |
| 休業する | 賃貸なら休業中も家賃がかかる | 自治体によっては休止の届出 | 一時的な事情で、再開の見込みがある |
| 事業として売る | 売却代金を受け取れる。原状回復などの出費を避けられることが多い | 貸主の承諾、許可・届出の手続き、譲渡契約 | 稼働実績・家具家電・物件に価値がある |
廃業する場合の手続き
住宅宿泊事業(民泊新法)の場合
- 事業を廃止した日から30日以内に、自治体へ廃業等の届出を出します
- 自治体によっては、廃業届の前に定期報告(宿泊させた日数などの報告)を済ませるよう案内しています
- 届出住宅に掲げていた標識を外します
- 住宅宿泊管理業者に管理を委託している場合は、委託契約の解約も必要です
旅館業(簡易宿所など)の場合
- 営業を廃止してから10日以内に、保健所へ廃止届を出します。営業許可証の返納を求められるのが一般的です
- 様式や添付書類は自治体ごとに異なるため、管轄の保健所で確認してください
共通してやること
- 予約サイトの受付を止める:民泊の予約は数か月先まで入っていることが多いため、最終営業日を先に決めて、それ以降の予約受付を止めます。すでに入っている予約をキャンセルすると、予約サイトのペナルティや評価への影響がある場合があります
- 賃貸の解約:契約書で定められた解約予告期間(1〜6か月程度が多い)を確認し、原状回復の範囲を貸主と確認します
- 家具・家電・寝具の処分:事業で使っていたものは、家庭ごみとして出せない場合があります。買取業者や不用品回収の見積もりを早めに取りましょう
- 税務の届出:民泊以外に事業がなく、事業そのものをやめる場合は、税務署への廃業の届出なども必要です
費用の項目と計算の仕方は、レンタルスペースの閉店費用の記事が民泊にもそのまま使えます。
休業する場合の注意点
「いったん止めて様子を見る」という選択もあります。ただし、賃貸物件なら休業中も家賃がかかり続けます。予約サイトでの掲載を長く止めると、再開したときに検索で上位に表示されにくくなることもあります。再開の時期が決まっていないなら、休業より売却を先に検討したほうが、手元に残るお金は多くなりやすいです。
事業として売る(事業譲渡)場合
何が売れるのか
民泊の売却で値段がつくのは、主に次のものです。
- 家具・家電・寝具・アメニティなどの備品一式
- 清掃の外注先、マニュアル、料金の設定、メッセージの定型文などの運営の仕組み
- 月別の稼働率・単価・売上といった実績のデータ
- 賃貸物件なら、民泊として使える物件を借り続けられる権利(貸主の承諾が前提)
一方で、主な民泊予約サイトでは、アカウントやレビューを他人に譲ることは一般に認められていません。買い手は新しいアカウントで掲載を始めるのが基本なので、売り手としては「レビューがなくても予約が入る理由」(立地、写真、料金設定、清掃の質)を数字で示せると強くなります。
許可・届出の引き継ぎ
- 住宅宿泊事業(民泊新法):届出は事業者ごとのため、買い手が新たに届け出ます。届出が受理されるまで、買い手は営業できません。なお、自治体によっては、同じ住宅での年間の宿泊日数(上限180日)を前の事業者から通算して数えると案内しています
- 旅館業(簡易宿所など):法改正により、事業譲渡の場合は、譲渡する人と譲り受ける人がそろって自治体の承認を受ければ、買い手が営業者の地位を引き継げるようになりました。承認は譲渡の効力が生じる前に受ける必要があり、引き渡し日から逆算して早めに保健所へ相談することが大切です
賃貸物件の場合
- 賃貸借契約の名義変更か、買い手との再契約について、貸主の承諾を得ます
- 新しい契約でも、民泊としての利用が認められるかを確認します
- 保証会社の審査や、敷金・礼金の扱い(売り手に返す・買い手が新たに払う)を決めます
- 家主が不在になる形の民泊では、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。今の管理会社に、買い手も引き続き委託できるかを確認します
詳しい相場や進め方は民泊・簡易宿所の売却ガイドで解説しています。
やめるか売るか、判断の目安
次のうち当てはまるものが多いほど、売却を検討する価値があります。
- 貸主が、名義変更や再契約に応じてくれそう
- 旅館業の許可を持っている、または届出の手続きが整理されている
- 直近12か月の月別の売上・稼働率を出せる
- 家具・家電が比較的新しく、そのまま使える
- 最終営業日まで、まだ数か月の余裕がある
反対に、貸主が譲渡を認めない、物件を自分で使う予定がある、という場合は、廃業を前提に費用を抑える方法を考えます。
売るなら、稼働を止める前に相談を
民泊は、営業を続けている状態のほうが評価されやすい事業です。予約が入り続けていることが、買い手にとって何よりの判断材料になるからです。「やめる」と決めて予約を止めてしまう前に、まずは売れるかどうか、いくらになりそうかを確かめることをおすすめします。休業中や赤字の民泊でも、備品や物件の条件しだいで買い手がつくことがあります。
売り先の選び方はレンタルスペース・民泊の売却先の比較にまとめています。